2008年11月04日

【書評】優雅なハリネズミ:ミュリエル・バルベリ

「階層に分かれて生きるフランス人、でも人は人上も下もない」


優雅なハリネズミ
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書評/海外純文学



★★★★★★★★★★ west32書評 ★★★★★★★★★★

最近、本好きには良い単行本がなかったので、この本がリストに上がったときに思わず申し込んだ。幸運にも当たり、手には入ったが、残念ながら自分の状況を理解していなかった。今読みたい本が一杯溜まっているし、もっと真剣なことには試験勉強で忙しいんだ。そんな訳で手元に来てからナカナカ手がつかず、本好き!プロジェクトのは遅くなって申し訳ないことをした。

さて、この本はフランスの本屋さん大賞の作品とのことだが、そのとおり良い本だった。じわじわ楽しめる。とにかくフランスの階級世界を目の当たりにできる!!日本人には分からない階級の世界、高級アパルトマンの住人と管理人・お手伝いの間の貴卑の差、お互いがその上で生きている。今もまだそれが現実だ。しかしその中で日本人の金持ちオズ氏によってこの差が取り払われて行く。私たち日本人としてはこの格差をしっかり自覚しないとこの作品の面白さは分かり難い。だからそれを自覚できるまでの間、読むのは辛抱辛抱で理解していく必要がある。訳者もこの違いを日本人に伝えるのに苦慮しているようだ。でも半ばすぎれば環境設定がのみ込めてくる。となるとこの貴賎の対比、お互いの思いがわかり楽しめる。

主人公ルネは超高級マンションの管理人として、安定・確実な生活を送っている。すなわち下級世界の住人としてポトフを食べ、日がなTVを見るような生活を演じようとしている。本人は「ベニスに死す」を見て感動し、クラッシックを楽しみ、マルクスを読む。そう、フランスでいうインテリ層の生活が好きなんだ。住人の下院議員、料理評論家、実業家達はあきらかに卑しい管理人としてのルネの存在以外は認めていない。それに対し、ルネは逆に似非インテリ層をバカにして生きている。この環境設定を私たちはまず理解しなければならない。これが分かれば楽しめる。

日本人のオズ氏は金持ち、日本人ってフランスに行った時は散財しているからそう思われているのかなぁ、この設定はなんか私たちには変な感じ。ただ、このオズ氏がキーであり、彼がひねくれたルネの心を解いていく。実際の日本人はそうなのかは分からないが、小津監督の名前をもじったオズ氏はちょっと良い役。日本人としては何かうれしくなるが、こそば痒い。

いずれにせよ、階級思想のこり固まったフランス人上流社会にインパクトを与えるオズ氏の姿は不思議ともいえる。でもフランス人から観た異人、日本人がアパートメントの中のフランス人社会にインパクトを与えるという一つの役目、楽しめる設定だ。

著者バルベリ氏の言葉が最後にあるが、私たち日本人への良い言葉だと思う。私たちも海外、欧米崇拝にこんな思いを持ってみたい。
「好きになるというのは、良くない部分に目をつぶることではないのよ。本質的な部分を愛すること」

その上で訳者の注も面白い。
「日本人としての誇りをもっと持っていいのだといつも励ましてくれます」
フランスを通じて日本を感じることができる作品だ。


ミュリエル・バルベリ
Amazonランキング:5735位
Amazonおすすめ度:


posted by west32 at 19:48| 大阪 晴れ| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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