過去の力
- サンドロ・ヴェロネージ
- シーライトパブリッシング
- 1890円
書評
★★★ west32書評 ★★★
読み始めはちょっとしんどかった、この世界が判り難くて。
でも同じ名の主人公と男の立ち位置が判ってくると不思議に引き込まれる。古き映画、懐かしい映画のシーンも次々と述べられ、懐かしいような、デジャブー。
主人公は作家、しかも児童文学大賞で千五百万リラ(日本円で約75万円)を得ている。ところが授賞式でなんと彼はその賞金を昏睡児の母親にやってしまう。そのあと、亡父の知り合いという男、名前が主人公と同じジャン二、に付きまとわれる。
ここからは、父の過去がこのジャンニから語られ、何が真実か、また周りの人たち誰が真実かが段々混乱してくる。そして離れた妻と息子ともなんか遠い関係になってきて....主人公にとっては混沌の世界に陥る。
その中でいつも主人公は映画のことについて語る。オーソン・ウエルズ、デ・ニーロからマイケル・ダグラス、ケビン・コスナーの映画について。
主人公は同名の男、ジャンニに振り回されているようで、実は父のこと、自らの出生、家族というものにまとわりつかれて、自らが自らでもがいているようにも見える。
イタリアにおける、ロシアの影響、いやなんらかの怖れというのがあり、ヨーロッパという沢山の国のお互いの関係、かかわりを感じさせてくれた作品。
その一方、映画をネタにしながらもそこに描かれるアメリカのいいしれぬ影響力も感じる。
この混沌さが引き込まれるようで良いともいえるし、訳がわからなくなるともいえる。
ラベル:サンドロ・ヴェロネージ