凄まじいほどの英国の諜報活動、外交という場においていかに相手の情報を得て、いかにそれを活用するか!
本書では英国側資料をもとに戦前・戦後の日本が描かれるが、日本、天皇も彼らの中では丸裸にされている。

英国機密ファイルの昭和天皇
- 徳本 栄一郎
- 新潮社
- 1470円
livedoor BOOKS
書評/ルポルタージュ


★★★★★ west32書評 ★★★★★
日本の戦前、戦後の状況を海外、イギリスの側の情報から探ると、いかに日本が外交の中でどう苦しんでどんな策をしようとしたか、そしてイギリスが日本との間でどんな外交活動をしていたのかが、違った目で明らかにすることができる。
戦前、日本は欧米の列強の前でどのようなスタンスで中国での利権を確保し、自らのプレゼンスを確保するかに苦慮していた。一方明治維新の前から日本、長州との長い付き合いがあり、良好な関係を持っていた英国は日本との関係をいかにつなぐかを考え、昭和天皇の弟秩父宮のイギリス留学を画策する。英国側の資料によりその事実が次々と明らかにされていく。
戦争直前も、日本の中の穏健派を利用しなんとか日本と欧米との戦争を回避すべく英国は努力する。ただ残念なことに対日開戦の最後の決断は英国首相のチャーチルによってなされてしまう。
戦後、GHQ(米国)の占領下で米国型の民主化が進められる日本に対して、英国は同じ立憲君主である立場から日本を導こうとする。その間も英国は日本に対する情報収集を続け、この中では日本側の動きである天皇退位、天皇改宗のこともキャッチしている。天皇からは戦中もし側近の意見に反していれば首を書かれていただろうという衝撃的な言葉まで得られている。
日本の戦前、戦後を英国の資料で説き明かされるのは何か怖いものがある。外交という場で英国が情報を集め、英国のためどう生かそうとするのか、そんな機密情報が語られる。英国とはとんでもない国なんだろうか?
世界中に植民地を持ち、いまでも大英帝国?いや、英国連邦(Commonwealth of Nations)として女王エリザベス2世を頂く国たちがなぜあるのか、英国の日本に対する外交的な動きからそのことがわかった。相手の国のエリートを自国英国に留学させ、十分な教育を与え自国のエスタブリッシュメンと対等につきあわさせる。そしてそのエリートが自国に帰って国の意思決定にかかわる際に、彼らを親英国派として活用する。この本で描かれる白州次郎も秩父宮もそうかもしれない。
ある種怖いが、素晴らしい連邦の統治方法だと思う。そういう意味で英国連邦という世界の30%の人口を有する世界は今も存在するのだろう。
個人的な感覚だが、在日英国大使館の大使や英国人スタッフは現地語である日本語が本当に堪能だ。聞くところによると、日本に来る前、来てからもかなりのトレーニングを行っているらしい。だからこんなふうにして現地に溶け込み、英国との良い関係つくりを行うことが可能なんだろう。日本もそんな英国の外交システムを学ばねばならないんだろう。
日本の歴史を通して英国という国の一端を見ることが出来る本だ。
主な登場人物
昭和天皇、秩父宮、高松宮、三笠宮
吉田茂、白州次郎
クリストファー・パービス 英国系投資銀行S・G・ウォーバーク幹部
チャールズ・エリオット駐日英国大使、クライブ駐日英大使、ロバート・クレーギー駐日英国大使、アルバリー・ガスコイン 駐日英国代表
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