はじめは病院に一方的に批判的な記者の書き方で偏りを感じさせたが、途中からその内容に目を引く。病院と患者側の歩み寄りの必要性、当事者同士の直接的解決などこれからの方向性が現れてくる。

明香ちゃんの心臓―〈検証〉東京女子医大病院事件
- 鈴木 敦秋
- 講談社
- 1785円
livedoor BOOKS
書評/ルポルタージュ


★★★★★★★★★★ west32書評 ★★★★★★★★★★
医療というのは難しい。私は患者としての立場しかないが、医者が「屍を越えて」はじめて次のより良き医療になると思っている。その途上で医者に対して強く出ることができない我々患者と、医者との良い接点は何だろうか?そこには人と人とが信じあい、患者と医者のお互いの心のつながりしかない。
一方、医療事故が起きたとき、患者としては自分のエゴの押しつけだけで医者個人を糾弾するだけが重要なんだろうか?否!はじめは被害者である平柳さんは執刀の瀬尾医師を追及するが、大学病院で働いたこともある平柳さんは問題の根源を理解し、個人ではなくシステムを変えることが、重要である点を指摘する。次へと医療側が変われるシステム変更、それを基に更なる治癒手法の解決を目指すことが必要である。
ところで、この本のはじめの部分は一方的に医療側(東京女子医大心研)に批判的な記述が多く、偏りを感じさせた。著者の新聞記者である鈴木氏はもっと中立的な書き方が必要ではないかと思う。それでも途中から、病院と患者側思いのねじれによる食い違い、お互いのの歩み寄りの必要性、医療ADR(裁判外紛争解決)による病院側と患者側の直接的解決....これからの模索を描く部分からは圧倒的に引き付けられる。
私達が何かの時にお世話になり、専門家以外ではなかなかわかり難い医療。半分以下の確率でも手術で助かりたい病気の患者はそれに賭け、この屍を乗り越えて医療の進歩が行われる。その結果、医療が進み、手術の成功率が高まると次は医者へのプレッシャー、病院側の権力化が進む。でも、私達は病気に打ち勝ちたいし、そのためには患者側と医療側の信頼関係が重要である。そんなことを知るためにもこの本は是非読んで頂きたい。
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