東京外大教授、荒このみさんのジョセフィン・ベイカー研究集大成。

歌姫あるいは闘士 ジョセフィン・ベイカー
- 荒 このみ
- 講談社
- 1890円
livedoor BOOKS
書評/ルポルタージュ


★★★★★★★★★★ west32書評 ★★★★★★★★★★
人種差別の米国から脱出し、フランスで歌と踊りの才能を開花したジョセフィン・ベイカー、地位と名声を得た彼女は差別と戦った。その姿を著者 東京外大教授、荒このみさんが、ジョセフィンの来日、パリでのダンサー、理想の家族、人種差別との戦い、破産の各時代を通して横断的に解説・分析している。
ここに綴られるように、第一世界大戦後の米国は対外的には自由民主主義を推し進める、大きな力を持ったすばらしき国だが、自国内ではカラードにはひどい差別をしていた。一方フランス・パリは自由で新文化を受け入れる街として、アメリカ文化も受け入れていた。ジョセフィン・ベイカーは、そんな街にアフリカン・アメリカンとして一代衝撃を与え、文化的に立場を確立した。
いくつか残る写真をみると、確かにアフリカンのあの黒はびっくりするほどきれい。「ダンス・ソヴァージュ(野生の踊り)」「バナナの腰飾り」、それぞれの姿はアフリカンエロスの力強さに満ちあふれている。少し危ないほどの裸体を晒したジョセフィンだが、確かに惹かれる。力強い生命力ほとばしるアフリカンの姿には、生き物として惹かれるものがあり、先日の世界陸上大阪でもあの見事な黒い肌のアフリカン達は強い存在感を示していたと私は思った。
差別に苦しんだジョセフィンはカラードに対する偏見に戦っていた。いや相対するものではなく、お互いが一緒に暮らすことによる共生を目指していたようだ。「虹の部族」という考えで、混血、色々な肌の色をもった宗教的・文化的背景をもつ孤児たち12人を養子にし、人種的・宗教的・文化的偏見のない社会建設を目指した。考え方を広めるために観光施設として家族の住まいであるレ・ミランド城を公開した。養子の子供たちにとってはあまり良くなかったかもしれないが、色々な種族の混沌としたカオスのような家族生活は必要な試みだったろう。
荒このみさんの描くジョセフィン・ベイカー像は、正面からだけでなく色々な面から、つまり賛美だけでなく問題点にも触れながら彼女の生き方を描いており、時系列的に並べるのではなく、ジョセフィンの思い・動きに合わせて時代をオーバーラップして関係つけて述べられている。そんな意味でこの本はジョセフィンの一生をわかりやすく私達に伝えている。
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