全体が長いので、はじめの1〜2章と最後の14章、そして何よりもエピローグと佐藤氏の解説をまず読んで頂きたい。

北方領土交渉秘録―失われた五度の機会
- 東郷 和彦
- 新潮社
- 1890円
livedoor BOOKS
書評/ルポルタージュ


★★★★★★★★★★ west32書評 ★★★★★★★★★★
この本は、東郷氏が外務省に入りロシアにかかわる1968年から現在2007年までの長い期間、ロシアと日本との平和条約、4島返還を中心に、東郷氏が集めた情報に基づき述べたもの。
今まであった国と国との交渉に関して関係者がつくる記録っていうのは、故人のあるいは遠い遠い昔を振り返ってというものが多いが、主に’85年から’01年という至近年で、関係者がまだかなり存命、いや現役もいるというこの時代を描いているのはまれなことだと思う。
ソ連からロシアへとその指導者が、ブレジネフ、アンドロポフ、ゴルバチョフ、エリツィン、プーチンと変わるこの長い時代(日本は中曽根首相から安倍首相まで10名以上)、著者はソ連、ロシアという国と北方領土問題に係ってきた。筆者によればこの間に5回の領土問題の解決の機会があったという。一回目が’85年のゴルバチョフの党書記長就任、以降’91年の経済案件と北方領土問題の組み合わせ交渉で、’92年の秘密提案(内容は秘匿されている)、’97年の東郷欧亜局審議官の直接関与によるもの、最後が’00年プーチン大統領自身の手による新しい切り口によるもの。
長い....確かに国と国の間の交渉は、一字一句こだわり、過去の歴史に基づき進められることはわかるが、読んでいてしんどかった。5度の窓が開いた瞬間があったとはいえ、あまりにも牛歩の動きで読んでいて疲れる。記録としてはもっと的確な文章であるべきだし、秘録を語るといっても引きこまれる文でもない。
読む人に寄るのだろうが、私は途中の部分はただただ疲れた。
解説の佐藤優氏も述べるように、一〜二章と最後の14章は引き込まれる。これには同感する。この部分では場面が色々移り変わり、文章が流れるように進むので、読みやすく、メリハリがある。一方、途中の部分は読むのが疲れる。やはり放棄したいという誘惑にかられる。
ただ、全体を通して外交記録としては成果あるものだと思う。
あとは、読み人にもう少しやさしく内容を切り詰めて頂きたかった。
(感想を)
私自身は本を手に入れてから色々な事情で着手が遅くなって、内容も前後の章を除き、押し引きの交渉記録で重いため....随分と時間がかかった。途中で挫折しそうになった。
でも、読後私の心に残った言葉は、東郷氏の祖父の言葉、
「交渉で一番大切なところにきた時、相手に『五一』を譲り、こちらは『四九』で満足する気持ちをもつこと」
これって人間がかかわる交渉事すべてに係る。一方的な勝ちはそのときの自分にとっては良いが、長い期間係る相手との関係でお互いが納得できるものでないといけない。いわゆるwin-winになるようにしないと、結局はどこかで破たんする。
これを事実を持って教えてくれるだけでも意味ある本だ。
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