恐ろしい本だ。私たちは今、捕食ピラミッドの頂点にいると思っているが、これは今の表面的なこと。これまで私たち、ヒトは捕食者からの恐怖を受けてここまで進化したのだということをまざまざと教えてくれる。

ヒトは食べられて進化した
- ドナ・ハート; ロバート W.サスマン、伊藤 伸子
- 化学同人
- 2310円
書評/サイエンス


★★★★★★★★★★ west32書評 ★★★★★★★★★★
私たちの祖先は「狩るヒト」といわれ、他を狩りしてその上で生活を成り立たせ、進化してきたと考えられている。それが現在のヒトにつながる進化の歴史だと一般的に信じられている。今の我々も何らかの形で他のモノを狩りしないと生きて行けない。この本はそんな考え方が果たして正しかったのかという疑問の言葉を投げかけ、私たちが恐ろしい捕食者から逃れるために進化したという恐ろしい説を提案される。
現生人類のすぐ前にいた祖先と思われるホモ・エレクトス、彼らの存在は実は非常に危うい存在であったらしい。発見された化石の頭骨には鋭い傷が入っている。これは何を示すのか!
いったん現代に戻ってみると、一般的に霊長類は、タカ、ワシ、フクロウ、その他の捕食性鳥類、ネコ科動物、リカオン、ジャッカル、ハイエナ、クマに捕食されているのだ。また人間もどこかで食べられている。アメリカでピューマに、インドでトラに、インドネシアでワニに、ブラジルでヘビに....つまり彼ら捕食者は武器を持たない霊長類をおいしい食材として食べているのだ。
筆者らは、このような事実を次々と明らかにしている。特に実際にクマに食べられた女性の言葉が出ている部分は本当に目を覆いたくなる。「エド、こちらシンシア。早く来て、クマにたべられてる」....この言葉のあと彼女は....。
第二次大戦中、沢山の日本兵が捕虜になる前にワニの餌食になったという事例も描かれる。
ヒトが捕食者に食べられるなんて!
確かに今は道具を持って他の動物たちの頂点にたったとはいえ、その少し前、いや今も本当に捕食者たちにとって脆弱な存在で、彼らの狩りで捕らえ易い美味しい食材だ。私たちはそんなことは思いたくないが、今も食べられているという事実を考えると....恐ろしいことだ。筆者らのいう捕食圧がヒトの進化の触媒であったという提案も、この本に書かれることから考えるに信じるに値する説と思われる。
私たち、他のモノを食べているヒトの立場からいうと、自分達が食べられているということは考えたくない。しかしそれが進化につながっているという恐ろしい説は、この本を読むと目の前に現実味を持ってくる。これは、今までの進化の理解とは違った目で私たちの歴史をたどってみることができる本だと思う。
でも本当に恐ろしい。
ドナ・ハート; ロバート W.サスマン, 伊藤 伸子 / 化学同人(2007/06/28)
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